<?xml version="1.0" encoding="utf-8" standalone="yes"?><rss version="2.0" xmlns:atom="http://www.w3.org/2005/Atom"><channel><title>確率</title><link>https://blog.ast.moe/tags/%E7%A2%BA%E7%8E%87/</link><description>Recent posts from 五里霧中</description><generator>Hugo</generator><item><title>文章を作るわけじゃない。Jevは何をするAIなのか</title><link>https://blog.ast.moe/blog/2026-10-01/</link><pubDate>Thu, 01 Oct 2026 11:33:14 +0900</pubDate><guid>https://blog.ast.moe/blog/2026-10-01/</guid><description>&lt;h2 id="概要"&gt;概要&lt;/h2&gt;
&lt;p&gt;Jevという名前を見かけても、チャットで質問するAIなのか、検索用のモデルなのか、既存のLLMを小さくしたものなのかは分かりにくい。自分もJevを使うMCPサーバーを作ったが、APIの呼び方を知ることと、その返り値をどう理解すればよいかは別の問題だった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;
&lt;span&gt;
&lt;a target="_blank" href="https://docs.typesafe.ai/introduction"&gt;
TypeSafe AIのJev
&lt;/a&gt;
&lt;img class="external-link-icon" src="https://blog.ast.moe/images/outer-link.png" width="12" height="12" alt="" aria-hidden="true" loading="lazy"&gt;
&lt;/span&gt;
は、渡された情報に対して、あらかじめ定義した質問へ判断を返すモデルである。返ってくるのは自由な説明文ではなく、Yesの確率、候補ごとの確率、段階評価など、プログラムで扱うための値だ。例えば問い合わせの文章を渡し、「請求の相談か」「配送の相談か」「担当者へ回す必要があるか」を評価する。回答を読んで会話を続けるというより、回答を受け取ったコードが次の処理を決める使い方になる。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;このような仕事はLLMでもできる。実際、多くのシステムがLLMへ分類や採点を依頼している。しかし、文章として答えを生成すること、指定した形の値を返すこと、正しい確率を返すこと、返された判断から行動を決めることは、それぞれ違う問題だ。出力がJSONとして正しくても、判断の中身は間違う。回答に&lt;code&gt;0.9&lt;/code&gt;と書かれていても、その数値が実際の正解率を表しているとは限らない。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;この記事では、まずLLMを判断処理へ組み込むときに何が難しいのかを考える。その後、Jevの公開された入出力と処理方式を確認し、確率予測、校正、適正スコアリング則、意思決定、判断の保留という基礎理論へ進む。最後には、それらを問い合わせ分類のシステムへ戻し、何をモデルへ任せ、何をコードで決めるかを考える。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;対象は2026年10月1日に確認した公式資料と公開研究である。Jevのネットワーク構造、重み、具体的な学習レシピを再現した記事ではない。公開情報から確認できる仕様、理解するための一般理論、自分が考えた設計例を分けて扱う。以下の問い合わせ、確率、料金計算、評価表は、特に出典を付けた箇所以外は説明用に作った例であり、Jevへ送信して測定した結果ではない。&lt;/p&gt;
&lt;h2 id="1-jevを初めて聞いた人へ"&gt;1. Jevを初めて聞いた人へ&lt;/h2&gt;
&lt;h3 id="11-文章を読んで決めた範囲の答えを返す"&gt;1.1 文章を読んで、決めた範囲の答えを返す&lt;/h3&gt;
&lt;p&gt;例えばネットショップに、次の問い合わせが届いたとする。&lt;/p&gt;
&lt;blockquote&gt;
&lt;p&gt;商品は届いたのですが、カードの明細に同じ金額が二つあります。片方を取り消してほしいです。&lt;/p&gt;
&lt;/blockquote&gt;
&lt;p&gt;人間なら、請求に関する話で、取り消しを求めていると読み取れる。ところが、コードで同じ処理を作ろうとすると、どの語を条件にするかが問題になる。「二重請求」という語があれば請求担当へ回す、と決めても、この文章にはその語がない。「カード」がある文章を全部請求へ回せば、商品に付属するカードの話まで混ざるかもしれない。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;こうした、表現はばらばらだが意味で判定したい部分にモデルを使う。ただし、担当部署を選ぶだけなら、毎回丁寧な回答文を書いてもらう必要はない。システムが必要としているのは、例えば&lt;code&gt;billing&lt;/code&gt;、&lt;code&gt;delivery&lt;/code&gt;、&lt;code&gt;product&lt;/code&gt;、&lt;code&gt;unknown&lt;/code&gt;のどれに近いかという情報だ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;Jevは、このような入力と回答範囲を与える形式で使う。資料の本文や顧客の文章を&lt;code&gt;state&lt;/code&gt;へ入れ、何を判断するかを質問として定義する。モデルが返した候補や確率を、呼び出し側のコードが受け取る。問い合わせを送る、担当者へ通知する、追加情報を聞くといった行動は、その後のシステムに残る。&lt;/p&gt;
&lt;pre tabindex="0"&gt;&lt;code class="language-mermaid" data-lang="mermaid"&gt;flowchart TD
A[&amp;#34;問い合わせの文章&amp;#34;] --&amp;gt; B[&amp;#34;状態を用意する&amp;lt;br/&amp;gt;注文情報・必要な履歴&amp;#34;]
B --&amp;gt; C[&amp;#34;Jevへ質問する&amp;lt;br/&amp;gt;担当分野はどれか&amp;#34;]
C --&amp;gt; D[&amp;#34;候補と確率を受け取る&amp;#34;]
D --&amp;gt; E[&amp;#34;コードで取扱いを決める&amp;#34;]
E --&amp;gt; F[&amp;#34;担当へ回す&amp;#34;]
E --&amp;gt; G[&amp;#34;情報を追加して確認する&amp;#34;]
&lt;/code&gt;&lt;/pre&gt;&lt;p&gt;この図のJevは、問い合わせ対応の全部を実行しているわけではない。カード会社へ連絡したり、実際の請求記録を調べたりするのは、別に用意した処理である。文章だけを見て「二重請求の相談らしい」と分類できても、本当に二重に決済されたかは決済記録を確認しなければ分からない。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;ここを最初に分けておくと、Jevが何をする道具なのかを理解しやすい。与えた証拠について、決めた問いを評価する。外界の事実を調べることと、証拠の意味を判断することは、システムの中で別々の仕事になる。&lt;/p&gt;
&lt;h3 id="12-名前とsystem-oneという呼び方"&gt;1.2 名前とSystem Oneという呼び方&lt;/h3&gt;
&lt;p&gt;TypeSafeはJevをSystem One modelと呼んでいる。この名前を理解するために、先に心理学で使われているSystem 1とSystem 2を説明しておきたい。Jev独自の用語でも、コンピューターの規格名でもない。人間の考え方を、素早く自動的な処理と、注意を向けて考える処理に分けて説明するための呼び方だ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;System 1は、あまり意識して手順を組み立てなくても進む、直感的な処理を指す。例えば、よく知っている人の顔を見て誰なのかが分かるとき、顔の特徴を一つずつ文章へ書き出し、候補を順番に比較しているわけではない。簡単な例として「2足す2はいくつか」と聞かれたときも、多くの人は計算の手順を意識せず、すぐ4と答えられる。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;一方、System 2は、注意を向け、途中の結果を保持しながら進めるような、熟考を伴う処理を指す。例えば「17掛ける24」を暗算するとき、17掛ける20と17掛ける4に分け、二つの結果を足す、といった手順を考えるかもしれない。見慣れない契約の条件を読み、例外と適用範囲を確認する作業も、こちらのイメージに近い。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;この呼び方はKeith StanovichとRichard Westが用い、Daniel Kahnemanが広めた。Kahnemanの
&lt;span&gt;
&lt;a target="_blank" href="https://bear.warrington.ufl.edu/brenner/mar7588/Papers/kahneman-nobel-ampsy2003.pdf"&gt;
A Perspective on Judgment and Choice
&lt;/a&gt;
&lt;img class="external-link-icon" src="https://blog.ast.moe/images/outer-link.png" width="12" height="12" alt="" aria-hidden="true" loading="lazy"&gt;
&lt;/span&gt;
でも、二つの処理の特徴と名称の出所が説明されている。脳の中に「System 1という部品」と「System 2という部品」が、二台のコンピューターのように独立して存在するという意味ではない。ここでは、思考の進み方を区別するための枠組みとして読めばよい。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;また、「直感は間違いで、熟考は正解」という区別でもない。慣れた仕事なら、経験を積んだ人が素早く適切に判断できることもある。反対に、時間をかけて考えても、使った情報や前提が間違っていれば答えは間違う。速さの違いと、正しさの違いを一緒にしないほうがよい。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;この話をJevへ戻すと、
&lt;span&gt;
&lt;a target="_blank" href="https://docs.typesafe.ai/concepts/system-one"&gt;
公式の説明
&lt;/a&gt;
&lt;img class="external-link-icon" src="https://blog.ast.moe/images/outer-link.png" width="12" height="12" alt="" aria-hidden="true" loading="lazy"&gt;
&lt;/span&gt;
では、System Oneという名前を、この素早い判断と熟考の対比から取っている。必要な材料と質問を与え、限定された答えを返す使い方を、人間の直感的な判断になぞらえた名前だ。人間の脳の仕組みをそのまま再現しているという意味ではない。&lt;/p&gt;</description></item></channel></rss>